今回は地震による転倒について振り返るよ~
転倒?そういうのは構造さんに任せればいいんじゃない?
意匠さんがデザインするときにその設計に無理がないかどうか把握していないと、構造事務所との調整するときに苦労するんじゃない?知っておいて損はないと思うので紹介するよ
今回検討した検討対象について
高さが5780mmの壁、この壁に庇と階段、基礎がつながっている。
当初は常時(長期)の検討のみを行っていたんだ。
だけど、審査機関から「短期時の接地圧の検討は問題ないですか?」と
指摘を受けた。
これがどういう意味か分かる?
まず、長期の検討というのは
壁、庇、階段、基礎を合計した重量に対して地盤が壊れずに支持できるかだよね?
その通り!
では短期は?
短期の検討=「常時(長期)+地震時・風圧時の応力」ってことだから
地震時・風圧時の応力を求めないといけないってことだ。
その通り!
ではなぜ審査機関は、短期の接地圧の検討を求めたんだと思う?
それは軸力(重量)が増えて地盤が壊れやすくなるからかな?
組合せ応力度で 「常時N/A+地震などM/Z」を
習ったことを覚えているよ。
そうそう
その考えに肉付けするんだけど
地反力の求め方には2つある
1つが組合せ応力度
もう1つが地反力係数αを考慮した計算式だよ。
実際にやってみよう~
上記条件で接地圧を2通りの解法で求めて同じ結果となった。
次の条件も確認してみよう。↓
見てわかると思うけど「条件2」は
M(転倒M)を10kNから100kNに条件を変えた。
その結果として、地反力に微妙な差が生じている。
接地圧係数を考慮した解法2の方が値が大きい。
あ、接地圧係数αの算出式も変わっている
e/Lが1/6を超えると算出式が変わるんだ!
つまりe(偏心)が大きいとαの算出式が変わる。
解法1と2、どちらを採用した方がいいと思う?
解法1は転倒Mによる偏心を考慮していないよね。
偏心が大きすぎると対象物が転倒してしまうから、その考慮はするべきだと思う。
よって偏心を考慮した解法2を採用した方が安全なので適切だと思う。
そうそう
自分も今回同じように考えているよ。
条件3としてさらにMを大きくした場合を考えてみよう。
え!?
こんなに変わるの!?
偏心が大きい程、係数αがかなり大きくなっている
そうそう
これを見て分かると思うけど
e偏心を無視して好き勝手に自分が望むデザインをした場合、
接地圧≒転倒しないように地盤の支持力を確保しないといけなくなるよ
言っている意味分かる?
偏心が過剰になることを意識せずに設計してしまうと
必要接地圧がかなり大きくなる。
この接地圧を確保できなければ、地盤改良を行ったり、直接基礎は辞めて杭基礎になったりするってことだ!?
そういうこと!
構造屋としては、上記の考えについて意匠さんに説明することはないので
偏心が大きくなりそうなデザインを行う場合は注意が必要になるよ。
では実際の建物で振り返っていくよ!
E通りの壁において転倒の検討を行う。
検討箇所がE通りとF通りの間の階段で連結するため、転倒MはE通りの壁、F通りの壁の両方を求めて合計する必要がある。計算過程をみていこー
上式でまずE通りの壁の設計荷重P1を求める
同様にF通りの壁の設計荷重P2も求める
次に各条件を当てはめて抵抗Mを求める。
抵抗Mが転倒Mより大きいことを確認する
ここからが本題で接地圧の算出だ
これで終了?
おわりだよ
念のための解説だけど
独立基礎の場合、e’/Lは1/3以下に抑えた方がいい。
理由は、基礎底面に過大な浮き上がりを生じさせないため!
今回は布基礎なので、建物と繋がっていることから、1/3を超えていても接地圧の範囲内であれば問題ないと判断したよ。
利用したファイルを添付しとく
参考文献
実務から見た基礎構造設計P141~
実務から見たRC構造設計P283~
H12 擁壁設計標準図P108
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