今回はスパンが飛んだスラブについて振り返るよ
まず上のスラブについて
スラブのスパンが7m近くあって、スラブの端部が壁と接続している
まず、この情報を元にモデル化を行ってみよう
Aはスラブの両端を固定
→スラブ右端部のMが壁に伝達
Bはスラブの両端をピン
→壁にはスラブのMが伝達されないので、壁は固定ーピン(=自由)
AとBの使い分けにルールはあるの?
ないよ。
設計者判断になる。
Mを青文字で表記しているけど、このMが小さい方が
鉄筋も断面も小さくできるから経済的な設計となるよ
だったら、Bパターンはスラブ下の方に大きな力が集中してしまうってことだ。
Aパターンで検討した方がいいじゃない?
そーだね。
スラブだけの検討ならAパターンがいいかもしれない。
でも、このスラブの左端部Mが建物にも伝わるんだ。
このMを建物側で抵抗しないと、部材がねじれてしまう。
建物側の抵抗部材になる梁についても考えないといけない。
スラブ左端部について
梁の負担は赤色だよ。
スラブ端部のMが大きい程、この梁の負担も当然大きくなる。
なので、大スパンのスラブと接続している梁がある箇所は、梁の断面が大きくなることを想定した方がいいよ。
なるほど!
ちなみにこの大きくなる梁はどこまで伸ばしたらいいの?
上図はスラブと接続してる箇所の梁幅250の梁をA-B間まで設けている。
梁を受ける壁がBにあるからAーB間でOKなんだ。
ここでこの梁の断面を確認してみよう。
AーB間に計画した梁だと、梁成が大きいため室内から見えてしまう。
これは見た目的にも良くないので梁を外側にずらしたほうがいい。
👆こうすれば梁型が室内から見えなくなる
梁型が見えない場合も梁は同じようにA-B間で計画していいの?
いやだめだよ
梁幅250を受ける壁があるC点まで梁を延長して欲しい
👆こういう伏図になるよ。
Bの箇所みたら分かるけど、梁幅を受けるには壁厚が足りていない。
なのでCまで梁を伸ばすことになる。
あと注意点として伏図では気付きにくいけど、梁がA-C間で計画するということは
B-C間の開口部にも影響してくるから軸組図でも確認が必要だよ。👇
ちょっと質問だけど
この梁幅はどうやって決めているの?
スラブ左端部のM曲げに長さを掛けてそれを負担する支点(耐力壁)で割ってあげると「ねじりT」が求まる。
梁の断面(幅とせい)によって、ねじれの許容値は決まっているから、このねじれTが大きいと梁の断面も大きくなるんだ。
なるほど。じゃ、A-C間で梁を計画した場合は、負担支点数は「3」になるってこと?
それはだめなんだ。
ねじれの元になっているスラブがA-B間に計画されているのに、
梁をC点まで計画することで、C点までねじれが負担できるか?
って言われるとかなり強引だと思う。
なので負担支点数はスラブが計画されているA-C間に耐力壁がある2になるよ。
正しいイメージとしては、下のようにみどり文字の2までってことになるよ。
※下図は梁を室内に計画した場合の例。梁を室外側に計画しても考え方は同じ
意匠としてはRGを小さくしたいからスラブのMを建物の梁で負担する上のAパターンは嫌だな
Bパターンでは考えないの?
う~ん
Bパターンはスラブ左端部がピン扱いだ。
自分としては実際、スラブ左端部がまったく固定度がないピンと考えるのはかなり不安だし無理があると思うんだ・・・。 計算上は可能だと思うけど・・
なので左端部は剛と考えたい。
スラブ右端部について
次はスラブ右側について考えよう。
まずは固定度について。
最初、モデル図でAのパターンで考えるって説明したけどこれに補足する。
スラブ右端部を固定と考えるのは、スラブと壁の剛性(硬さ)が同程度の場合になる。
剛性が同じっていうのは
コンクリートの断面が同じ、鉄筋量が同じってこと?
そそ。
今回は壁よりスラブの厚みが大きいのと、スラブの鉄筋量が多いことから
スラブと壁とで剛性が異なるんだ。
Mの伝達にはこの剛性が影響してくるから、固定度を調整しないといけない。
固定度を調整?
具体的にどうするの?
計算ソフトでは
完全固定=1.0
完全な固定ではない場合=設計者判断で入力
ピン=0
とすることができる。
慣例的に、今回は完全固定ではないので「0.6」とするよ。
そうなるとモデル図が少し変わってくる。
こういう形になるよ。
モデル図としてはAを修正してCになるね。
じゃ、前提条件が整理できたところで
実際のスラブの検討方法を教えて
まず、スパンが大きいことから「たわみ」が問題になることが分かる。
たわみの検討はどうやっているか分かる?
片持ち梁の場合は よく「スパンの梁せい1/10以上確保する」って言うのがあるから
それのこと?
そそ。
正確には1/10超えた梁成が必要だよ
下図にそれぞれの必要なせいを示すよ。
スラブ(片持ち以外)なので1/30未満にしないといけない
よってt>7200/30=240
それに加えてこの庇が負担している荷重についても考慮するよ。
上が断面
下が伏図
庇スラブが負担する片持ちスラブの面積は
屋根スラブの45度範囲だよ。
この重量を庇スラブに与えて計算をするんだけど
計算ソフトの「スラブ」ではこの荷重の設定ができない。
なので、スラブではなくて「梁」として検討を行うよ。
※梁の形状が変形しているので扁平梁とも言うよ。
扁平梁で、厚み550mmは必要になった。
当初、意匠計画ではt=180だったので3倍近い厚みになった。
※実際、このあとスラブ負担面積3.38㎡は過剰すぎるため精査して面積を低減したが180では収まらなかった
厚みを180とするため意匠事務所と調整して、壁を立ち上げて庇スラブを支持することになったよ。
この変更で1枚の大スパンスラブ(一方向版)が2枚の片持ちスラブに変わる。
この変更でスラブの負担が大分軽くなって厚みが180に収めることができた。
なるほど
スラブ厚みはこれでOKってことだね。
他にはどんなことを検討しているの?
転倒の検討、、壁縦筋の検討、庇の本体建物への水平力伝達の検討、壁端部補強筋の検討を行っているよ。
まずは転倒の検討から説明するよ
下図の絵を見れば分かると思うけど
庇スラブを支持している壁は地中梁でつながっているから地震時において転倒する可能性はないと思う。ただ、安定性確保のため、社長判断で壁単独でも転倒しないよう検討した。
次に壁縦筋の検討では、CS3を負担しているW20aの鉄筋量を確認するよ。
水平力を受けるCS3と壁に発生する曲げMを壁縦筋で負担できるかの確認をするよ。
それぞれで水平力がかかってくる位置が異なるのでM1とM2の足し合わせをする。
W20aの壁は高さがあることに加えて庇スラブの重量も影響して鉄筋量が大きくなった。
次に水平力伝達の確認だ。
この庇は2枚の片持ちで構造計画を行っているがやはり大スパンなので、構造的な安全性の確認のため水平力の伝達の確認を行った。
本来、この確認は4階建て以上の建物の屋外階段で必要となる検討になる。
確認方法として
スラブに発生する水平力と壁W26に発生する水平力を足し合わせて曲げMとする。
スラブと壁で重心が異なるのでL1とL2がでてくる。
※W26の高さは上半分を負担するものとしてH/2としている。
W26壁の重量は考慮しているのに
どうしてE通りのW20aの壁の重量は考慮していないの?
W20aの壁は、
さっき説明した壁縦筋の検討で片持ちスラブCS3の重量も含んだ重量からMを求めて検討をすでに行っている。
また、ここで重量を考慮するのは過剰だと考えて入れてないよ。
この検討結果として、庇スラブと建物本体との接続部に水平力を伝達するために必要な
鉄筋を計画することになる。
最後に壁端部補強筋の検討だ。
これはW26壁に地震力が発生した場合に壁がせん断破壊しないかの確認と
壁鉄筋が引き抜けないかの確認をするよ。
※検討内容省略
この壁端部補強筋の検討と転倒の検討が似ているような気がするんだけど
なにが違うの?
W26は壁長が短く細長いため引き抜き力が大きくなってしまう。
転倒の検討では、水平力に対する転倒力が大きい場合、構造体の自重などの抵抗力が上回っているか確認をしている。
コメント