今回は耐力壁のバランスが悪い物件の振り返りをしたいと思うよ
耐力壁のバランスが悪いというのはどういうこと?
この物件は東面の開口部を広く取りたい意図があったので
東側に壁(=壁柱)が一切なかったんだ。
東側に壁柱がない建物ってどういうことかイメージできる?
柱がないってことだからかなりバランスが悪いっていうのはイメージできます。
RCならありえないと思うけど・・
WRCならOKなの?
ダメだよ~(笑)
なので、東側に壁を追加したんだ。
追加する際の壁長さはどうやって決めているか覚えている?
開口Hの30%以上の長さが必要だよね!
OK!
意匠さんは平面的にバランスよく耐力壁を追加することを意識して
平面を検討して欲しい。
4号建築物で構造計算が不要だからって構造的に不適切な設計にならないように注意してね!
では本題に入ろう!
本物件は予算がないため
天井なしで躯体あらわし
それでも梁型を室内に出したくないという要望があった。
また、開口部のHもスラブ下まで最大に計画していたので
梁を設けることができない。
また、平屋建物の屋根スラブが4つのレベルに分かれており問題がないか
というのがあった。
開口部周りの梁は逆梁として計画した。
東側はほとんど耐力壁がないので
耐力壁がない部分の梁は設けない計画としたよ。
耐力壁がなくてもOKなの?
耐力壁がない部分は、屋根スラブを一方向版として検討しているので問題ないよ。
スラブを4辺固定とすると荷重の負担が周囲の梁に伝達されるけど
一方向版なら荷重と直交方向には梁は不要だよ。
屋根スラブのレベルが異なるけど、これは特に問題ないの?
問題はあるよ。(笑)
構造解析は建物のスラブが同一平面で剛という前提で計算を行っている。
この物件のように一つの建物でスラブレベルが異なる場合、その応力がちゃんと伝達できそうか確認が必要だよ。
具体的には、異なるスラブレベルの端部Mを比較して大きいのM曲げが立上り壁の壁縦筋と梁STPで伝達できるか確認が必要だよ。
問題になるのは、このスラブ段差レベルに開口部がある場合だ。
開口部があるとその部分は、スラブ端部Mを伝達できないってことになる。
つまり、スラブ段差がある場合、その境界の立上り壁には開口部は設けることができないってこと?
開口部を設けることはできるよ。
ただし、開口部を設けることで周囲の壁の負担割合が大きくなってしまうよ。
開口部の偏りはない方がいいかな。理想は開口なしで!
あと、開口部周りの梁はどう計画したの?
今回はスラブ下に梁成を確保できないので逆梁にしたよ。
逆梁にして梁を設けている箇所と梁を設けていない箇所があるけど理由は分かる?
梁を設けている箇所は、すぐ近くの壁を耐力壁としたいから
設けていない箇所は壁がないからかな・・
もうちょい補足すると
地震時の水平力は壁柱に作用するよ。
次に、その水平力は壁の柱頭と柱脚に分担される。
柱頭のM曲げを抑え込むために、梁に釣り合うための梁の端部にMが発生する。
当初、この物件の意匠担当者は室内に梁を設けたくないばかりに
屋根梁をねかせて計画していたんだ。しかも、壁の軸線からずらしていた。
壁の軸線からずらすとさっき説明した、柱頭のMを梁で抑え込むことができなくなってしまい、片持ち梁のようになってしまう。
せっかく設けた耐力壁が有効に効かないんだ。
だから、壁と同じ軸線上に計画した上で逆梁で計画した。
梁が無くてもいい箇所は壁がないから計画しても意味がないんだ。
柱頭のMを抑え込むために梁を設けるのに、その壁柱がなければ柱頭のMも発生しないからね!
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