崖が近い 土圧を負担する建物 壁式構造

構造さん
構造さん

今回は崖が近い建物に振り返るよ

普段、崖の高さってどの部分を測っている?

敷地境界線沿いの崖高さを図面に記載しているよ

ほしい。

崖高さは敷地境界線沿いの最高高さだけを考えてもだめ(下図)

実際、地震で崖崩れが発生する場合は、境界線近辺は関係ないよね

だがから、隣地「付近」ではなくて、隣地も含めて崖の最高点の高さを把握する必要があるよ。

下図のように隣地の概況を確認して

崖が急に上がっているのか、水平なのか確認する

なるほど!

崖の高さの算定は理解したよ。

意匠さん
意匠さん

今度は構造設計上の崖の扱いを整理して欲しい。

沖縄県条例5条によると2m超えの高低差(H)に対して、崖の上下で1.5Hの離隔距離があればよいとある。

だけどこれは敷地条件によってはむずかしい

なので 3項を利用して「建築物の安全上支障がない場合」となるよう対応することが多い。

3項利用時の構造側の考えを教えて欲しい。

ひとことで言うと「崖が崩れても建物が安全である」ことを考えているよ。

具体的には

①土被り高さの確認 ←意匠側も知っておいて欲しい知識

②土被りに合わせて壁厚と壁筋の設計

③土圧による水平力の考慮 の3つ。

土被りの高さの算定方法は県条例のように指示があるの?

自分が把握している限りでは指示などはない。

なので多くの場合

パターンA 崖の最大高低差の中心線(=H/2)と現況法面との交点を示し、その交点から30度の勾配線を示す。この勾配線が地震で崖が崩れた時の土被り高さになるよ。その後、土砂量に不足分が生じる場合は、適宜修正を行う。

パターンB 崖下の基点から30度の勾配線を描き、その勾配線と現況法面が囲む面積を把握する。その面積が地震ですべて崩れるものと想定して土被り高さを確認する。

まずAパターンをイラストにするとこういう感じ?

そうだね

なるほどね

Aパターンの場合

土砂崩れが発生した場合、左側の面積はくずれて右側に流れていく。   

その結果 左側の面積≒右側の面積となるんだね

こうやって土被り高さが分かるのね!

でも、この場合、勾配線が建物に入り込んでいる範囲はどうなるの?

上のイラストだと、その分の土砂が考慮されていない土被り高さになっているんじゃない?

その通りだよ。

いままで勾配線が建物に入り込んでいる範囲のことは特に考慮していなかったんだけど、今回、審査機関から同じような指摘を受けて見直したんだ。

つまり 土砂崩れラインを適宜修正して左側の面積と同等以上になるように土被り高さを設定しなおしたってことだね

そうだよ

 以上のことから、意匠側としては、崖の近くに建物を計画する場合は、①崖が崩れたことを想定した想定ラインを作図し、そのライン内にはサッシなどの開口部は設けられないことを最初に想定することができるよ。

②土被り高さは法面と崖最高高さから土砂崩れ想定ラインを引いて、土砂面積が左右で適切となるように適宜設定することになるよ。

③土圧を負担する壁は、シングル配筋は厳しいので壁厚は200以上はみて欲しい。

④土圧は水平力として建物を横に押す力になるので、建物が滑らないかの確認が必要になる。

⑤常時(つねに)土圧を負担する場合は、真下方向の重量に水平方向の土圧が加算されて、合力としては斜めになってしまう。

この斜めの合力に対して基礎の支持力算定時は、傾斜角を考慮することになる。

考慮すると、支持力の低下につながる。※支持力低下割合は土砂量による。

まとめると、土圧を受ける建物については、まず、土被りの高さを把握する!

そして、基礎下の地盤がやわかったら直接は厳しいことを想定しよう。

おっけー

ありがとねー

さいごにパターンBのイメージも乗せておく。

こっちは設計上、不利になりそうなので採用したことはない。

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