今回は部分地下の物件の水平力負担について振り返るよ
車庫部分のみ土圧を受けるような部分地下の計画なんだけど
この場合どのように検討しているのか教えて欲しい。
下図に示すような部分地下がある場合、水平力の一定割合は周囲の地盤が負担する。
その負担割合を設計者が指定しないといけない。
この設定は、構造計算ソフト(WALL)の「部分地下水平力の指定」という項目で入力ができる。
設定では、「a.支点反力比に対する割合」と「b.全そうせん断力に対する割合」の2つを選択できるが、bの考えは良く分からないのでaで説明したい。
イメージしやすくするために、aを選択した場合で、すべての支点の軸力を50kNとして「α=1.0」とするとQ1=1/2(Q2+P)になる。
つまり、周囲の地盤へ流れる地震層せん断力も1/2(Q2+P)となり赤枠で示した部分となる。
αの値はどうやって「1.0」と決めたの?
「0」じゃダメなの?
分かり易く極論を言うと
周囲の地盤が地震層せん断力をまったく負担しない場合は、「αを0」とする。
言い換えると、建物本体が負担する水平力の割合が100%の場合は「α=0」となる。
式を見ても分かるように赤枠の部分が0ということは、地盤へ流れる値「ー〇〇〇」の部分も「0」ということだよ。
※実際、周囲の地盤がせん断力をまったく負担しないという場合はないので
「α=0」というのは使うことがないと思う。
じゃ、α=1.0というのは、
建物本体が負担する水平力の割合が0%ってこと?
ちがうよ。
ここでα=1.0とするということは、aを選択しているので
「支点反力比に対する割合」でせん断力を負担するということになるんだ。
なるほど
α=1.0は、
「支点反力比に対する割合でせん断力の一部を建物へ、そして残りを地盤へ流すための設定」
α=0は
「すべてのせん断力を建物で負担するための設定」ということだね!
ふと思ったんだけど素人目で考えると
水平力を地盤に流さず、せん断力すべてを建物で負担した方が頑丈な建物ができて安全なんじゃない?
それは大きな勘違いなんだ
「地盤へ流れるせん断力=杭の水平力として検討する」ということなんだ。
なので、「α=0」として、すべてのせん断力を建物で負担するということは地盤への水平力が発生していないことになり、おかしい状態、適切とは言えない状態になるよ。
なるほど!
じゃ、基本的に「α=1.0」として検討を行えばいいんだね。
そーだね
次に実際にαの値を入力した結果を見てみよう!
213.8 194.2 232.2の値がそれぞれどの部分を示しているかも教えて欲しい。
次にα=0とした場合の結果だ
杭メーカに杭の検討を依頼する場合、1階の基礎 2階の基礎 それぞれどの値を杭屋に伝えればいいの?
部分地下がないような一般の場合は、この計算書の結果(層せん断力)を添付すれば分かってもらえるんだけど、部分地下の場合は特殊だからこちらから検討に採用する水平力を伝えた方が間違いがないと思う。
この場合、1階の基礎の水平力は232.2kN 2階の基礎の水平力は229.8kNになるよ!
まちがいないようにね!
なるほど!OK
あと、ちなみに1階基礎の水平力232.2kNの算出も教えて欲しい。
下記のイメージだと上階の基礎がローラー支点になっているけどなぜ?
ローラー支点ておかしくない?
上階の支点が固定だと
地震力Pの水平力を上階の基礎がすべて負担してしまい下階へ伝達されない。
もっと極論を言うと
上階の基礎を固定度を100として、下階の基礎の固定度を0とすると
上階の基礎検討では水平力を100%負担できるような設計になるので安全側になるけど、下階の基礎では水平力をまったく負担しない設計となっているため危険側になる。
実際、上階の基礎支点が固定となると下階基礎の水平力負担割合が不適切になるため、上階の基礎支点をローラー支点としているよ。
ローラー支点とすることで、水平力をどれくらい負担するかの設定を行うことができるようになる。
これが今回説明している、部分地下水平力の指定の「α」のことだよ。
そうだったんだ!
部分地下がないようないつもの場合は、支点は固定なのに今回はローラー支点だったからおかしいなと思っていたんだ。
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