今回は土圧受ける設計について振り返りたいと思うよ
1階部分が土圧を受けるような断面の場合、どのように考えているの?
1.まず、土圧の重量を算定
2.土圧の重量をソフトに入力する
3.土圧によって支持力が低下するので支持力式に土圧による低下を考慮した上で支持力の確認
4.土圧を受ける壁の検討
5.土圧を受ける地梁の面外の検討
6.片土圧を考慮した壁量の確認
7.滑動の検討
という流れで設計を行う、
土圧重量はどうやって求めるの?
土圧重量は
表面載荷荷重+土圧の足し合わせになる。
まず表面載荷荷重を求めよう。
ところで表面載荷荷重って分かる?
地表面に載荷されている荷重ってことでしょ?
単位面積当たり5~10kNだったはず・・
そうだね
今回埋め土部分の表面が負担する荷重(≒積載荷重)のことだ。
該当部分が車の通行などあれば10kN/㎡ なければ5kN/㎡だよ。
静止土圧係数という係数も必要になるんだけど分かる?
一級建築士の学科で勉強したような・・・
主動土圧 受動土圧 静止土圧
静止土圧は構造体と土が静止状態にある時の圧力で、静止土圧係数は0.5
次は土圧の算定だ。
算定式は分かる?
静止土圧P=K×γ×Z
K=静止摩擦係数
γ=土の単位体積重量
Z=地表面からの深さ
これで表面載荷+土圧で検討に必要な値が求まった。
そのまま土圧が一番かかる深さで検討してもいいけど
少しでも経済設計になるように配慮しよう。
土圧を受ける外壁は1層分の高さがあるので、上半分と下半分に分けて土圧を算出する。
これで単位面積当たりの土圧重量が求められた。
今度はこれを使って
スパンと高さを当てはめて荷重を求めるんだね。
そうそう。上のようになる。
求めた荷重をソフトに入力すれば計算結果に反映されるよ。
次に支持力の補正をしよう!
土圧を受けなければ鉛直荷重だけでいいんだけど
土圧という水平方向の力も受ける場合、鉛直荷重+水平力=斜めの合力になる。
この合力の角度を求めて、支持力式に反映させるよ。
どうやるか分かる?
土圧はさっきと同じように求めたらいいよね。
土圧受ける壁の長さを考慮してあげたら土圧が求まる。
鉛直荷重は計算書の基礎計算用軸力のページを見たら分かったよ。
そうそう
これで鉛直と水平方向の荷重が求まった。
今度は角度が知りたい。
tanθ=コサイン/サインを利用して
tanθ=水平方向荷重/鉛直荷重
式を展開して
θ=アークtan(水平/鉛直)で角度を算出する。
この角度を支持力式に代入すれば斜めの合力を考慮(=傾斜角補正θ)した
支持力が求まる。
土圧による傾斜角を考慮するとかなり支持力が下がるね。
段々形状の断面に建物を計画する場合は、支持力不足に注意しないといけないね。
土地選定の時に注意しないとだ。
次に土圧を受ける壁の検討をやってみよう!
ソフトを使って検討を行うんだけど
計算に必要な条件として
支持条件、静止土圧係数、表面載荷荷重を設定する。
支持条件は、一方向版(ピンor固定)、4辺固定など色々あるけど
どう選択したらいいの?
一方向板ピンは
中央部に大きな応力が発生する。
一方向板固定・4辺固定は
端部の固定度に合わせて応力が上にずれる
この中で一番応力が大きい支持条件で検討を行えば安全な設計となる。
なるほど!
じゃ、一方向版ピンで解析を行えばいいんだね。
静止土圧係数は0.5として
表面載荷荷重は、土圧部分に駐車場を計画するから10kN/㎡としたらいいかな?
そうだね。👍
これらの値を入力して解析を行って壁自体の厚み及び鉄筋量を決定する。
土圧を受けることで、水平方向に外力が発生してしまう。
この方向のことを面外方向という。
次は面外方向の検討を行う。
次に土圧を受ける地梁の面外の検討をやってみよう!
まず、面外方向の応力を求めないといけないけど
これはどうやって求めるか分かる?
面内方向っていうのは、上から下へ流れる荷重のことで
面外方向っていうのは、水平方向の外力ことだから・・・
さっき求めた、壁の検討(支持条件ピン)で解析した結果
壁に発生するせん断応力(Q)でいいんじゃないの?
そうそう
その値を等分布荷重として与えて検討を行う。
計算の簡単のため、土圧を受ける壁を梁に見立てて計算を行う。
つまり 梁幅≒壁の高さ 梁成≒壁厚として解析を行う。
壁を梁に見立てて計算をしているので
この解析結果の主筋というのは、壁の腹筋にあたる。
これで土圧を受ける壁の検討はおわり♪
次に片土圧を考慮した壁量の検討をしよう!
片土圧(≒水平力)が大きくなるので、水平方向の耐力の確認が必要になるよ。
具体的にどういうことか分かる?
水平方向の耐力≒保有水平耐力ってことだから
壁式鉄筋コンクリート構造の場合、告示1026号で式が明記されていたはず。
Σ2.5αAw+Σ0.7Ac≧ZWAi
ここでWRCの場合、Ac(≒壁)はないので「0」となる。
よって Σ2.5αAw+Σ0.7Ac ≧ ZWAi
この式の意味は、計算方向の耐力壁の合計値(ΣAw)が大地震時の地震力(Co=1.0)よりも大きいことを確認しているってことでいいんだよね!?
そうそう、そういう考えで〇
ちなみに、αはコンクリ強度による割増係数だよ。
あと、建築学会の式は下記のようになるよ。
Σ2.5Aw ≧ ZWAiβ(≒1.0)
割増係数がなくなっていて、告示式より厳しいというのが分かる。
さっきの式に土圧を考慮するとどーなるか分かる?
建築基準法改正に基づく 構造設計Q&A集 P28によると
ルート1の場合
Σ2.5αAw+Σ0.7Ac ≧ ZWAi + αP
ってなっている。
α=1/3
P=方向別のその層の重量
そうそう
Pはソフトの計算結果ですぐ求められるから計算書チェックでもそこを見ればいい。
この式を満足していれば、土圧による水平方向の耐力は安全ということになる。
最後に滑動の検討をやってみよう!
検討式は分かる?
建物重量 × 摩擦係数 ≧ 安全率
でいいのかな?
摩擦係数は0.5でいいのかな?
式はあっているよ。
摩擦係数は色々あるんだけど
建物の活動の検討では0.5を採用しているよ。
※諸数値ありますが採用根拠について詳細不明
これで安全率も満たせば安全ということだ!
以上で片土圧が生じる場合の設計の解説になるよ。
コメント
「片土圧を受ける設計」大変参考になりました。自分で計算してみたいのですが、この一連の計算はどのようなソフトで行うのでしょうか?
コメント有難うございます。
ソフトは構造システムのソフトを使用しています。
一貫計算ソフト(建物の重量確認に使用) 壁式構造 ソフト名 WALL
二次部材計算ソフト(梁の面外検討に使用) KT-SUB
基礎計算ソフト(支持力低減確認に使用) KT-基礎
https://www.kozo.co.jp/product.html
※もしかしたらレンタルできるかもしれません。
黒猫さんが意匠の方であれば、それ用に合わせてブログを追記致します。
具体的には「意匠屋として概算基本計画の為に要所・ポイントを教えて欲しい。一貫計算ソフト購入してモデル化は大変など」
構造の方であれば、釈迦に説法かもしれませんが、荷重傾斜角の支持力低減は、黄色本と基礎設計指針2019にて不整合?があり、黄色本は低減するようにとあり、基礎設計指針には柱が傾斜していないければ不要と書いてありますので適宜盛り込んでください。
ご丁寧にありがとうございます。高低差が2m位ある木造基礎の土圧と水平力に対する検討方法について調べておりました。