今回は杭の設計で必要となる「水平地盤反力係数」について振り返るよ
一級建築士試験の時にもよく出題されていたけど
実務ではどういうときにでてくるの?
上の表示はソフトを使って杭基礎の計算を回した結果、表示されるメッセージだよ。
このメッセージの意味を解説していく。
そもそも収斂計算、kho,khってなに?
収斂計算は繰り返し計算
khoは基準水平地盤反力係数
khは水平地盤反力係数 のこと。
khoとkhの違いはなに?
まず水平地盤反力係数とは、「地盤の固さ」のことだよ。
地盤バネと表現したりもする。
地震時の水平力は、地盤を経由して杭に伝わることになるんだけど、地盤を経由することで
杭に与える水平力は小さくなる。
つまり、杭の周囲にある地盤が、クッションの役割を担っているんだ。
このクッション材である地盤が固い場合、杭頭の変位と杭本体の湾曲はどうなると思う?
そりゃ、杭の周囲にクッション材がギッシリ充填(=地盤)されているなら、変位も湾曲も小さくなると思う。
そうそう
実際の算出式を見ても、変位と曲げモーメント(=湾曲)は水平地盤反力係数が大きいと小さくなるのが分かる。
以上のことから
kho=杭頭水平変位が1cm時のkhということだよ。
なるほど!
杭頭の変位yやMoの算出にはkh(水平地盤反力係数)が必要っていうのは分かった!
じゃ、実際、Khはどうやって求めているの?
khを求めるにはkhoが必要になる。
前出したがkhoは、杭頭の水平変量が1cm時の水平地盤反力係数を示している。
下記のように算出式があるので、まずkhoを求める。次にkhを求める。
その次にkhを使って水平変位を求める。
求めた水平変位が1cmを超えている場合は、この水平変位を用いて再度khを求める。
何度か繰り返して水平変位が1cm以下となれば計算は終了となる。
計算終了時に出力される杭頭変位とMを使って、杭の断面検討を行っていくよ。
これが「収斂計算」の中身になる。
ややこしいね(笑)
順序をまとめると
①まず、杭頭変位1cm時のkhoを算出する。収斂計算1回目はkh=khoとして計算を行う。
②kh(≒kho)より杭頭変位yが算出さる。
③yが1cm以下なら計算終了。1cmを超えている場合は、khを再度、求める。
④求めなおしたkhを利用して、yを算出する。
※③と④を繰り返し(収斂計算)行い、yが1cmとなれば終了。
ってことだね。
よく一級建築士試験の
水平地盤反力係数の問題で混乱することがあるんだけど
「杭頭の水平変位は、水平地盤反力係数が大きいほど小さくなる」
「水平地盤反力係数は、杭径が大きくなるほど小さな値となる」
※どちらも正しい内容
1つ目は疑問はないと思う。
杭周囲の地盤が固い(水平地盤反力係数khが大きい)と、変位は小さくなる
2つ目は悩むかも
テキストなんかには「杭径が大きいと、杭から土に与える荷重の影響範囲が遠くまで及ぶため全体的な変形が大きくなる」と解説がある。
「全体的な変形(≒地盤の固さ・kh)と考えれば、杭径が大きいと変形も大きい=khは小さい」というのが分かる。
念のため式でも説明する。
式を見ても分かると思うけど
khを求めるにはyが必要で
yを求めるにはβが必要となる。
これだと求めることができないので、便宜的にβのkhをkhoと仮に決める。
そうすると、杭径Bが大きくなるとβは大きくなる
βが大きくなるとyは小さくなる
yが小さくなるとkhも小さくなる。
つまり、杭径Bが大きくなると、khは小さくなることが式の関係性からも分かるよ。
つまり、ソフトの計算結果として、「水平変位が1cm以下なので収斂計算を省略します」と表示されても問題ないということだ。
というか1cm超えると杭応力を過少評価することになるのでよくない。
なので収斂計算を行い、1cm以下となることを確認しないといけないよ。
参考資料:建築基礎構造設計指針P259~272
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