今回は擁壁の計算基準について振り返りたいと思うよ
計算基準になるものとして
宅地造成法(建築基準法)
基礎指針
道路土工 があると思うんだけど
どう使い分けているの?
宅造法:宅地開発や崖地などの指定区域
基礎指針:指定がなければこれを採用
道路土工:道路に適用
って考えているよ。
なるほどね!
それぞれどういう数値を採用しているの?
構造計算に使用する数値の厳しさとしては
宅造法 > 建築基準法 > 道路土工
ってイメージしてもらえばいいと思う。
なるほど。
一体として開発を行うような開発行為なんかで指定される
宅造法はより安全性が高いんだ。
それぞれどういう法律によって指定されているか教えて
OK
まず、建築基準施工令第138条1項五項
「2mを超える擁壁か」の確認
YESなら構造計算が必要
構造計算で確認することは
宅地造成規制法 施行令7条に
1.土圧 水圧 自重によって破壊しない
2.転倒しない
3.基礎が滑らない
4.沈下しない
とある。
施行令7条から構造計算に使用する
摩擦係数や土圧係数などが分かるよ。
次は基礎指針を使う場合について教えて。
基礎指針は法律とかではないと思うんだけどどういう立ち位置なの?
具体的にこうといえる程、くわしくはないんだけど・・
学会規準の基礎指針は法律である建築基準法よりも厳しめの基準になっていることが多い。
構造計算に必要な情報として
擁壁背面の裏込め土の種類、擁壁底板下の支持地盤がある。
基礎指針には、裏込め土には4種類ある。
この中に硬質粘土っていうのがあるんだけど、これは採用することはあまり考えられない。
理由として、わざわざ裏込めするために硬質粘土を運搬して転圧するのは大変だから。
なので他の3種類の土を採用するよ。
粘土を多量に含む砂質土ならφ24
シルト 粘土を含む透水性の低い砂質土ならφ30って感じ
それぞれに単位体積重量も定められている。
そーなんだ。
この土の情報はどうやって調査しているの?
原位置試験(ボーリング調査)をおこなって確認しているよ。
ボーリング試験を行わない場合は宅造法の別表を用いることができるけど
最初に説明したように、数値がきびしいので擁壁が大型化してしまう。
なるほど。
じゃ、擁壁が必要な住宅予定では表面波やSWSではなくてボーリング調査を実施した方がいいんだね。
ちょっと疑問なんだけど、
普通、砂は内部摩擦角があって粘着力は0
粘土は内部摩擦角が0で粘着力があるはずなんだけど、
基礎指針の摩擦係数の標準値の表には
支持地盤がシルトまたは粘土であっても内部摩擦角が定められている。
これは矛盾しないの?
そだね。たしかに
この土質には( )書きでフーチング下の厚さ約10cmの土をよく締め固めた角ばった砂又は砂利で置換することとある。
支持地盤が粘土あってもフーチング下を砂利などで置換すれば、ある程度は内部摩擦角が発生するという考えだと思う。
この内部摩擦係数0.35っていうのは内部摩擦角に変換すると19度になる。
19度っていうとかなり安全側の数値を採用していることになる。
加えて
0.35q ≦ qu/2を満たすこととある。
q=接地圧
qu=一軸圧縮強度
qu/2というのは粘着力のこと6.25N
つまり、粘着力が65%低減した接地圧よりも大きければ採用できるってこと。
でも、やっぱり粘土で摩擦係数って考えがしっくりこない。
他の方法で導くことはできないの?
基礎指針には粘性土地盤の場合は
一軸圧縮強さの半分を滑りに対する抵抗力とするとある。
一軸圧縮強さは、N値から推定するか実際に一軸圧縮試験を行うかの2種類がある。
当然、実際に一軸圧縮試験を行った方が精度がいい。
でも、ほとんどの場合、一軸圧縮試験は行わない。
少なくとも自分が担当しているような小規模な建物の場合は実施されていない。
数値的には、0.35を採用した方が構造物にとっては安全側の設計法になる。
一軸圧縮強さを利用すると、設計上は有利になるので擁壁底板長さなどを小さくすることができるが、圧縮強さにN値を使っている場合、その圧縮強さに信頼性がおけるか不明だ。
以上のことを踏まえた上で採用する値を決定しないといけないよ。
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