壁式構造の規定について

構造さん
構造さん

今日は壁式構造の規定に考えたい

意匠さん
意匠さん

壁式鉄筋コンクリートWRCの場合、構造規定の中で階高3.5mの上限がある。

ただし、建築物の一部分なら3.5mを超えても良いとある。

この規定を利用してなるべく階高が大きい空間を作りたいんだけど

大原則を3.5mとしている「構造規定」について詳しく教えて欲しい

構造規定はルート1で計算するための条件だよ。

また、ルート1とは「強度型」の建物の考え方だ。

構造規定である3.5mを超えた場合はどういう対応が求められている?

層間変形角が1/2000以下 および 保有水平耐力が必要保有水平耐力以上であることが求めらている。

あれ?RCの層間変形角は、たしか1/200だったような・・・

RCの層間変形角は標準せん断力係数Co=0.2のとき1/200以下だよ。

WRCの場合は、Co=1.0のとき1/200以下となるように

Co=0.2の時に1/2000以下となることを求めているよ。

きっとWRCはRCよりも強度型の考えで設計しないといけないから

RCよりも基準が厳しくなっているんだと思う。

せん断変形の許容値を厳しくすることで「十分な剛性」を確保しているよ。

実際、層間変形角と保有水平耐力の検討を行って階高3.5mを超える設計はしたことあるの?

うーん、ない。(笑)

勤め先ではWRCについてはルート1以外の設計は行っていないよ。

詳しくは聞いていないけど、強度型の建物であるWRCでは靭性はほとんど期待できない。

保有水平耐力計算は、極まれ地震での塑性変形を許容した設計方針だからWRCと相性が悪い。

こういう理由からルート1以外では設計しない方針を取っていると思う。

なるほど!

それじゃ、ルート1を満たさない意匠は避けた方がいいね。

あと、WRCは「強度型」というけど何をもって強度を担保しているの?

壁率と壁量の構造規定を設けて

Co=0.2で壁板にせん断ひび割れが生じないことで強度を保証しているよ。。

これは実大実験などにより、ひび割れ時の壁に発生するせん断応力度は5階建ての1階部分で0.45N/m㎡となっている。

この結果に応力が集中するケースや形状係数を考慮すると、せん断応力度の最大値は、1.0N/m㎡程度となる。

コンクリの短期許容せん断応力度はFc=18で0.9N/m㎡となっている。

つまり、構造規定を満たす範囲であれば、標準せん断力係数Co=0.2に対してせん断ひび割れをほぼ抑制できていると考えられる。

なるほど!

中地震のCo=0.2ではそーいう考えなんだね。

ちなみに極まれ地震のCo=1.0ではどうなるの?

うーん、これは良く分かっていないんだけど実大実験の結果、同様に構造規定を満たしていれば必要保有水体力を満足させられる。らしい・・

 ※ルート1じゃないのに良く分からない

ま、C=0.2の範囲であれば構造規定を満足させれば「十分な強度」を確保していることになる。

逆に、構造規定を満たさない場合は、必要保有水平耐力を満たさない可能性が高いため

保有水平耐力計算を行い、建物の靭性を確保する必要がある。ってことだ

階高の規定はなにを元にしているの?

おそらく、耐力壁の曲げ成分とせん断成分の比率を元にしていると思う。

WRCの規定で「耐力壁とは、壁の実長は隣接する開口部Hの30%以上」という構造規定があるんだけど、これは「縦に細長い壁は耐力壁として認めない」というものだ。

つまり、WRCは平均せん断応力度法を用いるため、曲げ変形成分があまり大きくならないようにしているんだ。

質問だけど、この30%という規定と階高の規定がなくなるとどーなると思う?

細長い壁でも耐力壁になるから、曲げ変形成分が大きくなってしまう。

そーなると平均せん断応力度法を利用するにはふさわしくないってことになる!?

そだね。

正解は分からないんだけど、いまのとこ自分はそう考えているよ。

なので部分的に階高が3.5m超えている場合、その空間の耐力壁において「曲げ変形成分が主体になっていない」ことを確認するべきだと思う。

WRCが高層化したときに5階以下 軒高16m以下の規定がある。

これはなぜ?

地震時、建物には水平力が働く。

それが転倒Mとして建物に作用するんだけど、抵抗Mとして効いてくるのは壁脚と壁梁と曲げ戻し力になる。

ただし、壁梁に曲げ戻し力を与えるための鉄筋を配筋しようとしても、壁梁の断面を十分確保できないことから、曲げ補強筋には限度がある。

実際、構造規定を満足する5階建壁式構造のモーメント抵抗を概算すると、直交壁の協力を考慮しないで、Co=0.5相当を確保できるかできないかという結果となっていた。

耐力壁や梁に十分な曲げ補強筋を配筋できず、高層化したときの転倒Mに対して十分な抵抗Mを確保できないため5階以下、16m以下の構造規定があるよ。

参考資料:建築技術 規基準の数値は「何でなの」を探る第2巻P25~

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