今回は「梁」の剛度増大率について振り返っていくよ
お願いしま~す。
ちなみに剛度増大率ってなに?
文字通り剛度=硬さを割増しのことだよ。
例えば屋根梁の上にハイルーフがある場合をイメージすると
ハイルーフの有無によって、この屋根梁の硬さ=剛度は異なってくるのは分かる?
分かるよ!
剛度が増すと応力が集中してしまうってことだね!
でも、注意して欲しいのはこの剛度の割り増しはけっこういい加減なところがあるんだ。
剛度増大率は、基準値を100としていて、この基準値に対して何倍かを与えているんだけど・・
この基準値100というのは、他の部材に対して十分に硬いだろうという目安でしかないんだ!
実際は50かもしれないし200かもしれない。
だから、ハイルーフのような立ち上がり壁がある場合、剛度増大率を入力していれば必ず安全というわけでもないんだ!
ん?どーいうこと?
応力が集中するから部材としては安全側で検討されるんじゃないの?
自分も最初はそう思っていたんだけど、応力がこの部材に集中するっていうことは、他の部材の応力が少なくなるってことだよね!
ということは、他の部材にとっては危険側になるんだ!
ベストなのは剛度増大率を入力あり、なし2パターン作って比べることが大切だと思うよ。
なるほど!
まず、応力図を比べて見よう!
比べると分かるように
剛度増大率の入力の有無で値が変わってくるよ。
たしかに!
入力すると、屋根梁の応力が大きくなっている!
ちょっと気になるところがあるんだけど・・・
地中梁の応力も変化しているけどどーして?
剛度増大率の割り増しを屋根梁に入力することで、
屋根梁の硬さが大きくなるってことだから、
応力の分担の割合も変化するんだ!
屋根梁の負担が大きくなって
地中梁は小さくなるんだ。
なるほど!
ってことは・・・
剛度増大率を考慮した場合は安全でも
考慮しない場合は危険な結果になることもあるってこと?
そうそう。変なはなしだけど
屋根梁にとても大きな立上り壁の断面がのっかている場合は
剛度増大率がかなり大きくなる。
つまり、計算ソフトの結果としては地中梁の負担が屋根梁に移るようなイメージだよ。
でも、この剛度の考えは「建物ができあがった時点をイメージ」していることに注意しないといけないよ。
実際の建物の作り方としては、地中梁から徐々に作っていくから、「建物が途中の状態」もイメージしないといけないんだ。
うまく伝わっているか不安だけど(笑)
地中梁だけの打設が完了した状態だと、屋根梁の剛度は関係なくて、その途中の状態で安全か確認した方がいいと思うんだ。
なるほどねー
でも、地中梁が打設した状態での応力解析なんて
やっているの?
自分が勤めている会社ではやってないよ。
あくまで100%完成した状態での構造計算を行っている。
WRCやRCはコンクリを打設すると一気にできあがっちゃうからね!
※勤務先はWRCやRCが主です。
木造や鉄骨なんかはRCと違って、建て方の順序によって応力の偏りなんかがあるから
建て方途中の状態も考慮して構造計算を行う場合もあるみたいだよ。
言いたいことは
剛度増大率の入力のある場合、ない場合の2パターンを見比べて
安全か確認した方がいいよーってことを伝えたかったんだ!
あと、最初に伝えたけど、剛度増大率自体がある意味「いい加減な目安」でしかないから
この割増を与える考え方も設計者判断になるみたい。
なるほど!
よくわかったよ!
参考までに検定比も載せておくね~
剛度増大率を入力することで
地中梁の検定比が緩くなって
屋根梁の検定比がきつくなっている!
続けるけど
この物件では剛度増大率を考慮すると
もともと想定していた断面ではNGとなったので
断面を変更したんだ。
断面を変更するってことは
梁幅や梁成を変更することだよね?
でも、この物件は梁成がすでに決まっているはずだから梁幅を大きくするしかないよね?
う~ん、でも壁式構造WRCだから壁厚みより大きい梁となると、
そのスパン全部を梁としないといけなくなるよね?
そうすると梁の長さが長くなるし、これに剛度増大率を考慮すると
結構きびしくなりそうだな・・
そうそう、そんな感じで意匠さんが事前に把握しておけば
構造屋と打合せするときにいいと思う。
この場合、梁長さを長くすると応力がきつくなるので
梁幅はそのままにするよ!
代わりに梁成を大きくしたらいい。
この屋根梁の上にはハイルーフの立上り壁があるから
この立上り壁も梁の断面として考慮してあげればいいよ!
なるほど!なぜ気付かなかったんだ(笑)
あと、ちょっとした「クイズ」なんだけど
剛度増大率は断面の硬さ
つまり、断面二次モーメントが影響しているんだけど・・
Q:剛度増大率を考慮の仕方にはどういう方法があると思う?
たぶん・・
元の梁断面に対して、立上り壁を含んだ断面の割合を求めたらいいんじゃない?
正解!だけどもうちょっと詳しく説明するねー
剛度増大率には「せん断剛度増大率」と「曲げ剛度増大率」があるよ。
「せん断」は梁断面の大きさの比較だけど
「曲げ」は断面二次モーメントの比較になるよ!
断面二次モーメントの式を覚えている?
たしかbh^3/12
b梁幅 h梁成
そうだね。
一番影響が大きのは3乗している「h(梁成)」だよ。
この梁成と梁幅の捉え方に種類があるんだ。
実際の断面のまま考慮する「精算」
梁幅を幅とする等断面積の長方形=「幅一定略算」
壁を含んだ全せいをせいとする等断面積の長方形=「せい一定略算」
梁成をせいとする等断面積の長方形=「断面積略算」
の4種類の考えがあるよ!
実務ではほとんど最後の「断面積略算」が使われているらしい。
なんでだと思う?
(知るかよ。そんなの・・w)
わかんないです。
でも、精算でやっておけば間違いないんじゃないの?
たしかに、間違いはないと思う!
でも、「精算」だと壁(腰壁・垂れ壁)のせいが3乗で効いてくるから
かなり大きな剛度増大率になってしまう。
最初に書いたけど
剛度増大率自体が「いい加減?な目安」でしかないから「実際そこまで評価すべきか?」ってことになるんだ。
だから、腰壁・垂れ壁の影響を精算で考慮するんじゃなくて、「断面積略算」で考慮しているパターンが多いと思うんだ。
梁にとりつく壁をまったく、考慮しなかったらダメだけど、ある程度考慮しているから
良しとしていると思うんだ。
なるほど~
勉強になった。
じゃあさ、今回の物件も「断面積略算」で検討したら?
この物件はWRCだから、壁と梁が同じ厚みなんだ。
つまり、腰壁、垂れ壁部分も梁成として設計できるたら「精算」のままでもOKになる。
精算のままでOKならわざわざ他の断面で検討する必要はないよ。
梁が壁より厚いRCは「精算」のままで検討すると、かなり大きな応力負担となって断面やら配筋を変更しないといけなくなるからやっかいってことで、「断面積略算」で検討しているんだ。
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